ひたちで小さなメディアをつくる

居心地のいい場をつくるために”小さなメディア”がどんな役割を果たすことができるか、日々の試行錯誤を綴っています。

ひたちの魅力はベーシックな暮らしの質が高いこと

昨年の郵便局のカレンダーに『ひたち帖2013夏号』の表紙写真が採用されたことをきっかけに、昨年4月にロータリークラブで講話をさせていただきました。
その内容を文章にしたものを今さらながら載せておきます。(ロータリークラブの会報誌用に書いた文章です)
今、大煙突マッププロジェクトで取り組んでいる内容は、この延長線上にあるということを読み返して、再確認しました。
 

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移住9年目の私が感じる日立の魅力
メディアクラフト 宗形憲樹
 
<はじめに>
 
私が日立で暮らし始めてからこの春で9年目になります。日立は妻の生まれ故郷で、私が生まれたのは福島県郡山市阿武隈山地の山村です。18歳までそこで育ち、大学時代の5年間を仙台で過ごしました。その後、東京で1年間、信州富士見町で11年間、札幌で5年間、東京で5年間暮らした後、8年前に妻の就職に伴い、日立に移住してきました。
農村や高原の町、地方中核都市、東京と、いろいろな町で暮らしてきた私から見ると、日立は格別暮らしやすい町だと感じています。
本日は、移住してきた人間から見た日立の魅力を『ひたち帖』という私が妻と制作した冊子の記事を通してお話ししたいと思います。
 
<『ひたち帖』とは>
 
2011年に瀬戸内海のある島で、女性クリエイターが自分のふるさとを綴った小冊子『しげい帖』を作成し、配りました。この1冊の冊子をきっかけに、自分たちの暮らす町を自分の目線や言葉で伝える冊子をつくろう、という「わたしのマチオモイ帖」プロジェクトが始まりました。
私たち夫婦も、このプロジェクトの志に共感し、2013年に「自分たちの暮らしを通じて日立の魅力を伝えたい」という思いで『ひたち帖』の春号、夏号、秋号、冬号の4冊を作りました。
その夏号の表紙写真(河原子海岸の夏の風景)が、ゆうちょマチオモイカレンダー2017の7月の写真に採用されたことをきっかけにお声がけいただき、今回ロータリクラブの例会でお話しさせていただくことになりました。
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『ひたち帖』は、私たち家族の暮らしの記録が、読んでくださるみなさんの心に響き、日立を訪れたり、日立での暮らしを豊かにするきっかけになれば嬉しい、と思って制作した私家版の冊子です。
主な内容は、日立の季節の移り変わりを私たちがどう感じて暮らしているかを紹介する「歳時記」と日立の魅力を季節ごとにイラストで紹介する「マップ」、暮らしていて感じる日立の魅力を紹介する「ひたち紹介」、歩いて発見した町の魅力的な場所を紹介する「ひたちてくてく」、自家菜園の様子を紹介する記事、自分が今どんな仕事をしているかを伝える記事です。
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『ひたち帖』は、私たちが日立で暮らして感じた日立の魅力をまとめた冊子なので、その記事を紹介する形で私の感じる日立の魅力をお伝えしたいと思います。
 
<気候の穏やかさ>
 
日立は、田園風景が続く広々とした関東平野が終わり、阿武隈山地が立ち上がるところにあります。海と山にはさまれた、細長くのびる温暖なまちです。
3月に入ると寒さはゆるみ、お散歩に気持ちのいい日が多くなります。
3月は次々と花が咲き出す季節。水仙福寿草に続き、ミモザなどの黄色の花がまず咲き出し、お彼岸頃寒さがゆるみ、沈丁花の香りで本格的な春の訪れを感じます。
コブシが花開き、あんず通りの杏が咲くと、次はいよいよ桜が咲くかと心が浮き立ってきます。
4月は桜の季節。桜が終わると木々が芽吹き始め、シャクナゲが咲きます。ゴールデンウィークに咲く藤の花は、霜が終わって野菜の苗を植え付ける合図。
5月は若葉の季節。実家の庭では父が丹精したボタンやシャクヤク、ツツジが咲き揃い、畑では空豆とエンドウの収穫。
続く夏も、比較的涼しく、日中は暑くても、朝晩は海から涼しい風が吹いてきます。
冬はからっと晴れた日が続き、雪はほとんど降りません。
この「気候の穏やかさ」がひたちの第一の魅力です。
 
<煙害を克服し桜の町に>
 
4月初めに、かみね公園や平和通り、熊野神社など、市内いたるところで桜が咲き出し、まちは桜色に染まります。
春号の「大煙突と桜」という記事では、なぜ日立が桜の町になったのかを書いています。日立の桜は、日立鉱山の煙害で田畑が荒れ、山林がはげ山になったところに、耐煙性の強いオオシマザクラが無償配布されて植えられたことに始まります。
日立鉱山の煙害は、当時世界一高い煙突を建てて煙を上空で拡散させることによって解決しました。その経緯は、新田次郎の小説『ある町の高い煙突』で描かれています。
足尾銅山の悲劇が日立で繰り返されずに煙害を解決したというのは、日立の誇るべき歴史です。
そういう歴史を踏まえて桜を眺めると、また違って見えてくるのではないでしょうか。
私が好きな桜は、かみね公園の遊園地の桜や平和通りの桜並木、熊野神社の桜、神峰神社近くの住宅にあるしだれ桜で、毎年桜の季節に見に行きます。
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<海が身近に感じられる>
 
上野駅から常磐線に乗って、初めて車窓から海が見えたら、次で降りると日立だよ」と妻は日立をいつもそう説明していたそうです。
阿武隈山地の山村で育った私にとって、海は遠い憧れの存在でした。
日立は、海と山が近く、町が海岸段丘の上にあるため、町のいたるところから海を眺めることができます。山の中で育った私にとっては、海がいつも身近に感じられるのが、日立に移住してきた頃、無性に嬉しかったのを憶えています。
私が特に好きなのは、日立駅から眺める海。春号の「海の見える駅」では、日立駅の紹介をしています。2011年にできた新しい駅舎は海を感じられる建物として、日立市出身の世界的建築家妹島和世さんによって設計され、より海が身近に感じられるようになりました。
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早起きした朝は、夜明け前から歩き出し、日立駅まで散歩に行って、星の残る海の上の空を眺め、海から太陽が昇るのを眺めて帰ってきたりしています。
夏号の「海を走る」では、夏に朝焼けの海を眺めるために、朝4時頃、まだ暗いうちに走り出し、海へと続く丘を登り、海までかけ下って、日の出を眺めて帰ってくる記事です。水平線から太陽が昇り始めると、海は最初オレンジ色に染まり、昇るにつれてキラキラと輝き出し、光の道が出現し、どんどんと明るくなっていきます。
日立で暮らす幸せのひとつは、海が身近にあること、朝焼けの海、夕暮れの海、高台から眺める海。海はいつもそばにあり、私たちが大いなるものに包まれてあることを感じさせてくれます。
 
<歩いて登りに行ける山がある>
 
気軽に登れる山が身近にあるのも日立の魅力です。
私が好きなのは、助川山。秋号の「ベビーカーで山へ」は、助川山にベビーカーを押して登った記録です。助川山の山頂は草原になっていて、標高328mながらとても見晴らしがよく、正面には太平洋とひたちの町が望め、背後に阿武隈山地の山々が連なっています。山頂のわきにはあずまやがあって、ゆっくり過ごせます。
助川山の登山道はほどよく整備された土の道で、トレイルランのコースとしても魅力的。助川山山頂から成沢団地に下る2kmの山道を駆け下るのは爽快です。
 
<食べ物がおいしい>
 
ひたちは温暖なため、一年中畑で野菜が育てられるのも魅力の一つです。
私は、暮らし始めた年から妻の実家の10坪ほどの土地を借りて畑をやっています。
1年目は有機農法で始め、2年目からは自然農法で耕さず、肥料をやらずに、草花と野菜が共存する美しい畑を目指して自家菜園を続けています。
庭にはミカンやビワがなり、中里に行けばりんご園があります。
町まで歩いて行けば、ソフトクリームがおいしい「ウィーン」やカボチャプリンが名物の「アーリーバード」、リーズナブルでおいしい「福寿司」、ゆっくり過ごせる三春のカフェがあります。
「ひたちてくてく」では、私の好きなお店をいろいろと紹介しています。
サンユーやマルト、カスミ等の大きなスーパーが揃い、農協の直売所もあります。
また、あかつ水産やお魚市場では地元で獲れたおいしい魚介類が手に入ります。
私の暮らす宮田学区には、おにぎりとお総菜が人気のやまがた屋さんに加え、ここ数年でパン屋さんやケーキ屋さん、焼き栗屋さんができました。
日立は、食にとても恵まれた町です。
 
<その他に紹介したひたちの魅力>
 
『ひたち帖』では、その他の魅力的な場所として、共楽館やかみね動物園、かみね公園、清水浜近くの昔からの家並みが残る場所、駅のビアガーデン、大みかの灯台のある公園、鵜が訪れる東滑川海浜緑地のグミ島などを紹介しています。
また、私も参加している日立風流物のことも書いています。このお祭りの伝統が、地域コミュニティを維持しているのを感じています。
 
<日立の魅力をまとめると>
 
ここまで書いてきた日立の魅力をまとめると、「海が身近に感じられる」「歩いて登りに行ける山がある」「気候が穏やかである」「食べ物がおいしい」ということになると思います。
それに加えて、東京に月1〜2回のペースで仕事で行っている自分にとっては、東京に近いというのも大きな要素です。
日立で暮らしていて一番物足りないのは、品揃えのいい本屋さんがないということなのですが、その不満は上京時に本屋さんに行くことで解消しています。東京に近いので、日立で足りないものは東京に行って満たすことができます。
日立の魅力は、これらの要素に支えられた「ベーシックな暮らしの質が高い」ということだと思います。
 
<地域への愛着と誇りが前提>
 
先日、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」で建築家でリノベーションの第一人者である大島芳彦さんが「前提となるのは、その地域に愛着と誇りをもっていることだ」とおっしゃっているのを聴いて、とても共感しました。
「地域への愛着と誇り」は、地域を深く感じ知ることから生まれるのではないでしょうか。
『ひたち帖』は、私が暮らす宮田学区をを中心とした日立の魅力をまとめたものですが、十王や常陸多賀、大甕など、他の町に暮らす人は、その町なりの魅力を感じて暮らしているのではないでしょうか。
その魅力を表現して共有していくことが、日立への愛着と誇りを持つことにつながり、日立の町をより暮らしやすい町にしていく前提になるのだと思います。
そのお手伝いをメディアクラフトがしていけると嬉しいです。

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