ひたちで小さなメディアをつくる

居心地のいい場をつくるために”小さなメディア”がどんな役割を果たすことができるか、日々の試行錯誤を綴っています。

加藤哲夫さんと中野民夫さんの対話のまとめ(2011年1月)

7年前の今日、加藤哲夫さんと中野民夫さんの対話を聴くため、青春18切符常磐線仙台往復9時間の旅を今橋さんと一緒にしたのが、その後「図解を作りながら考えを深める会」を始めるきっかけとなりました。
https://www.faj.or.jp/modules/contents/index.php?content_id=1666
 
加藤哲夫さんは本当に素晴らしい方でした。
あの後すぐに亡くなられてしまったけれど、あの時実際にお会いできたということが私にとってかけがえのないことでした。

その後でSNSにまとめを投稿していたので、ここに転載しておきます。

        • -

【仙台サロン】1:日立から仙台まで往復9時間、青春18切符を使って日帰りし、NPO法人日本ファシリテーション協会の仙台サロン1月例会に参加してきた。 @fuchan_region さんの紹介で知って読んだ『市民の日本語』の著者、加藤哲夫さんに会いたかったからだ。

【仙台サロン】2:例会のテーマは「ファシリテーション・ワークショップの意義と可能性〜2人の経験と知見から見えてきたもの、そして伝えたこと〜」。加藤哲夫さんと中野民夫さんが、参加者同士のグループ討論や会場とのやりとりを交えながら、対談された。

【仙台サロン】3:お二人の出会いは1989年、西荻のほびっと村レストランで、上田紀行さんの紹介だったという。(ほびっと村は私にとっても大切な場所。一昨日も行って、何冊か本を購入したプラサード書店がある場所。私がほびっと村に通い始めたのは1987年で、ちょうど同じ頃だ)

【仙台サロン】4:中野民夫さんと上田紀行さんは東大の見田宗介ゼミの同級生(私は1982年4月から87年3月まで仙台で大学生活を送った後、上京し、知り合った仲間と"創造の広場"という集まりをやっていた。その当時の仲間には見田ゼミに顔を出している人が多かった)

【仙台サロン】5:中野民夫さんは1957年生まれ。博報堂で会社員をしながら、ワークショップ企画プロデューサーをしている方。大学紛争が内ゲバに終わったのを見て、あえて既存の企業社会にドロップインして「ネクタイをした菩薩」をめざすことにした。

【仙台サロン】6:中野民夫さんは、『ワークショップ』(岩波新書2001年)の著者で、日本にワークショップという手法を導入した先駆者。『ファシリテーション革命 参加型の場づくりの技法』(2003年)、『対話する力 ファシリテーター23の問い』(2009年)などの著書もある。

【仙台サロン】7:加藤哲夫さんは1949年生まれ。せんだい・みやぎNPOセンターの代表理事。10年間サラリーマン生活をした後、出版社や環境ショップなどを経営しながら市民運動を続けてこられた方。『市民の日本語』(2002年)などの著書がある。(私はこの本を読んで感動し、今回参加)

【仙台サロン】8:加藤さんは、市民の声が届かず、反映されない社会は危ういと感じ、社会システムと認知を変えようとして長年市民運動を続けてきたという。

【仙台サロン】9:「10年単位で全力をあげてひとつのことをやれば、変わる」(加藤哲夫さん)

【仙台サロン】10:第一部は「ツールからルーツへ」、第二部は「ルーツからツールへ」。技術だけを学ぶとなかなか実際には使えないということで、お互いのルーツから話を始められた。

【仙台サロン】11:加藤哲夫さんのルーツは「反面教師としての洗脳系セミナー」「第三世界の解放運動〜解放の神学」「エリザベス・キューブラー・ロス著『死の瞬間』シリーズ」「KJ法、発想法、知的生産の方法、編集工学、考現学」「場づくり、ディープエコロジー」「まちづくりワークショップ系」

【仙台サロン】12:「集い合い、問い合うことが力です」(ジョアンナ・メイシー)。この言葉がぐっと来た。簡単な解決や正解がない問題を前にして、あきらめず、孤立せずに、集い合い、問い合うことで、すぐには変わらなくても、次の一歩がひらけていくという確信。

【仙台サロン】13:加藤さんのルーツを「精神世界系のセミナー、小さなメディアづくり、体と心の癒しへの関心、整理・発想・編集技法、場づくり、まちづくり」と整理し直すと、まさに自分のルーツと重なる。

【仙台サロン】14:『絶望こそが希望です』(ジョアンナ・メイシー)。絶望は全体とつながっているが故に感じる健全な痛み。絶望は、私の問題として受け入れることへの恐れ。絶望に向き合うことで、絶望を通して大きなものが見えてくる。それが、希望。

【仙台サロン】15:「何ができるか?」とすぐに解決策を求めてしまうが、短絡的な解決策では体は動かない。

【仙台サロン】16:加藤さんの好きなワークショップ技法は、相互インタビューによる他己紹介。20分間相手にインタビューし、そのメモをB6の紙にまとめて、皆の前で読み上げる。

【仙台サロン】17:20分聴かれ続けるということは、普通はないこと。20分間インタビューするには、相手に関心を持たないといけない。ふだん自分のことだけを考え、他人に関心を持っていないことに気づく。インタビュー中は、自分からは絶対に意見を言わないのがルール。

【仙台サロン】18:相互インタビューに基づく他己紹介によってお互いの関係性の質が高まると成果がよくなる。誰かひとりとつながるとその場にいかりがおりる。

【仙台サロン】19:中野民夫さんのルーツは、高校時代の倫理の先生の自主ゼミ(相互学習)と大学時代の見田宗介ゼミ(竹内敏晴さんの演劇レッスンなども取り入れていた)、そして、ひとり旅(アジア、中南米)。ほびっと村にも1975年頃から通い出し、さまざまなワークショップに参加したという。

【仙台サロン】20:中野さんは、自分の中で精神世界系と社会運動系の流れの乖離を感じていた頃、ジョアンナ・メイシーと出会った。

【仙台サロン】21:加藤さんも、社会運動をしながら、自分の自我を考えていた。加藤さんが、上田紀行さんに「社会運動と精神世界を統合する本を書いてくれ」と要望して書いてもらったのが、『覚醒のネットワーク』(1989年)。(出版当時、とても共感して読みました)

【仙台サロン】22:自治体、行政も変わりつつある。現場を動かせる人が求められている。しかし、現場に取り込まれずに「変だよね」と声を上げる人が必要。今は、はっきりとものがいいにくい社会。

【仙台サロン】23:10年単位で見るとNPOを取り巻く状況はよくなった。よくなったことは、よくなったと言おう。そうしないと、よくなったことが知られず、失われてしまう。年を取ると、10年単位で振り返られるのが強み。10年前は、企業、行政、市民が一緒に集い、考えることが難しかった。

ここまでで仙台サロン第一部「ツールからルーツへ」の振り返りはおしまい。第二部「ルーツからツールへ」の振り返りは、また明日やります。おやすみなさい。

        • -